駐在員Aの場合

『ある日突然に』駐在員Aの場合

Street of Shanghai 2014

私の場合、海外転勤の打診は唐突でした。 案外そういう方が多いのではないでしょうか。 そして、狙い撃ちで「打診」されたら断れませんよね、なかなか。 転勤を内諾してから実際の赴任までの期間はせいぜい2~3ヶ月でしょうか。 この間にみなさんは何をなされましたか?

自分の経験では案外、何もできませんでした。 親しい親族、友人、知人への挨拶。日本を離れる前に行っておきたい所、やっておきたい事。考えれば色々あったはずなのですが、ほとんど何もできませんでした。

やはり不意の転勤辞令に動揺したのだと思います。 それに仕事の引き継ぎ、子供の転校準備、行政手続き、等々。 結局、『したかったこと』はほとんど何も出来ず、後ろ髪を引かれる思いで任地に向かいました。 成田を飛び立つときは日本との「今生の別れ」のようにすら感じました。 そして、さしたる心の準備もないまま任地に到着。私の場合、任地は中国でした。

いざ、中国で生活を始めてみると、不便・不快・面倒なことの連続でした。 住まいのこと、食事のこと、子供の就学、自分の通勤、言葉の問題、そしてネットの問題。 入居早々住まいの修繕に追われ、安全性に疑問のある食事を摂り、何度も車に轢かれそうになりながら通勤し、まったく理解できない中国語に囲まれながらの超アウェーの生活の始まりです。

今までならTwitterでボヤき、Facebook人脈で問題解決を計り、Blogに日常を書き綴ることで問題を整理・解決することも可能でした。しかし、中国ではそれは困難でした。 中国のネット規制によりFacebook、Twitterが使えないからです。 Gmailさえ、中国当局とGoogleの間のイザコザでほとんど実用になりません。 私の場合、赴任当初はまじめに手足をもがれた心持ちでした。

Youtubeも見られず、FC2系はじめいくつもの日本のブログも見られなくなります。 著作権無視のネットTVで日本のテレビこそ見られますが、AM、FMラジオ放送は聞けません。 若いころからネットとラジオを生活の重要な道具として使ってきた私にとって、この状況は”島流し”等しい仕置きでした。 なぜ、このような”仕打ち”に遭わねばならないのか!?私が何をしたというのか!?

中国政府が情報規制をすることは、まだ分かります。 しかしなぜ日本のテレビもラジオも海外在留邦人の視聴を拒絶するのでしょう? 著作権、放映権、宣伝広告関係など各種”おとなの事情”があることは知っています。 しかし、それで良いのでしょうか?なぜ善処されないのでしょうか?

貿易収支が赤字だ、大変だ!と騒いでいるのです。 文化交流が大切だと喧伝しているのです。 人的交流、経済関係の緊密化が戦争の抑止につながると言っているのです。 我々駐在員はそのどれに対しても貢献をしているはずです。 もう少し、我々駐在員に対して日本は優しくなっても良いのではないでしょうか?

閑話休題

この間、久しぶりに日本に帰り古くからの友人のぽーさんと酒を酌み交わしました。 海外生活の不遇を愚痴り、そんなこんなの不便をぶちまけました。
・ ・ ・
「あのね、ぽーさんは笑うけれど本当に大変なんだから」
「今日びネットに繋がらない生活想像できます?」
「まぁ笑うしかないぐらい困るだろうねぇ」
「そうでしょう、ホント江戸時代の島流しですよ。『お前たちはお国のためによく貢献しているからバツを授けよう』ぐらい理不尽な話ですよ、まったく」
「まぁ、そうボヤきなさんな、俺がなんとかしてやるよ。まぁまぁ、もう一献...(笑)」
・ ・ ・
そんな話だったのですが、ほかに積もる話もあり、具体的に何をどうするなどもなくその晩は別れました。

先日、そのぽーさんから「ちょっと試してみて」のメールが。
添付ファイルにはVPNの設定の手順が書いてありました。
VPNならすでに利用してるんだけどなぁ、と思いつつ手順通りに設定してVPNオン。
フツーに繋がりました。
繋がった記念にぽーさんへGoogle Hangoutしてみると、これまたフツーに繋がり、クリアな音声で会話スタート。
・ ・ ・
「ぽーさん、VPN繋がりましたけどコレ何ですか?」
「VPN」
「それはわかるんですけど、なんのVPNですか?」
「俺が立ち上げたVPN」
「ぽーさんが立ち上げたVPN!?ナンデ?」
「あんた散々ボヤいてたでしょ、ネットに繋がらないって」
「いや、そうですが、なんとかVPNで検閲乗り越えてTwitter再開したって連絡したじゃないですか」
「安いところは結局繋がらない、高いところも値段ほどの品質じゃない、パソコン、iPhoneの同時利用は2つの契約、云々、ボヤいてたじゃないの」
「確かに言いましたが...」
「そこそこの性能で、3デバイスまで1契約でOKで、月額千円だったらどう?」
「え、さっそく営業ですか!?」
「そうじゃなくって、たとえばの話」
「そこそこ繋がって、3デバイスで使えて、月800円なら格安だと思いますけどね」
「月800円ねぇ...まぁ、ホントはほかでマネタイズしてVPNはタダにしたいんだけどね」
「ちょっとしばらく試用してみてよ。行けそうならサービス・インの準備するから」
・ ・ ・

そんなこんなで盟友(に昇格)ぽーさんが海外VPN事業をサービス・インするとのことです。
私自身は”盟友”のよしみでモニターとして継続利用させていただきますが、本当にこのサービスが軌道に乗れば中国駐在員各位にとってはそこそこ”福音”ではないかと思います。 なんか途中からはステマ、いやモロに広告宣伝に全面協力してしまいましたが、まだまだ母国日本も捨てたものではありません。ぽーさんの男気に感謝感謝です。

〔宣伝はこのぐらいでいいですかぁ?>ぽーサマ〕

駄文をここまで書き連ねて考え直しました。
日本からのサポートが足りない、優しくないと文句を書きましたが、そういう考え方自体がヒヨワ過ぎますね。
我々日本人がこれから本当に世界に根付くためにはもっと自立しないとダメですね。
アジア圏で仕事をしていて、何度も華僑は凄いと思いました。どんな国に行っても華人ネットワークがあり、母国を頼らず(元々頼れない?)自分たちが快適に暮らせるエコシステムを作り上げています。
一方、我々の生まれ育った国があまりに素晴らしいから、我々駐在員はヒヨワなのかもしれません。
そもそも華僑の人たちにはホームとアウェイという区別はそもそもないのかもしれませんし。
どこだってホームであり、どこだってアウェイ。

たまさかVPNについては盟友ぽーさんが救いの手を差し伸べてくれましたが、我々の困っていることはそればかりではないはずです。個人的には日本に残している老親の世話、無人の自宅の保全、そもそも自分たちの健康をこの中国でどう守るか...

困っていることを諦めず、自分で変えていかねば。誰も助けてはくれません。
一介のチューザイインに何ができるわけでもありませんが、ホリエモンこと堀江貴文氏の近著『ゼロ -なにもない自分に小さなイチを足していく- 』(ダイヤモンド社:アマゾンKindle版784円)に触発されたこともありますが、自分なりに"小さなイチを足していく"ことを今日から考えていきたいと思います。

まず手始めは何からしようか...

「通過儀礼」の話

中国に赴任してしばらくしてのこと、就寝中に腹部の激痛で目を覚ましました。
なにやら胃に穴が空いた予感!?
かつて経験したことがないほどの胃痛、胃袋を誰かに鷲掴みされたような苦痛です。
時計を見ると深夜2時過ぎ。
救急車は呼びたし、されど中国語はできず。
とりあえず朝までの辛抱。朝になったら同僚に助けを求めようと腹を括り、寝て痛みを紛らわそうとしたのですが、あまりの痛みで眠れません。
単身赴任の身、このまま誰にも知られず身悶えながら死ぬのか?という最悪のことまで考えながら、朝まで不眠で痛みにこらえました。

朝7時になると同時に同僚に電話をかけて状況を説明、同僚はすぐに日系クリニックに行けとの指示。
開院時間にあわせて、よろめきながらタクシーを捕まえ、慣れぬ中国語で必死にクリニックの住所を伝えなんとか到着。
思い返してみれば、あの時が自力でタクシーを乗った初めてだったかもしれません。
あの頃はまともに四声の区別もできず、相手の言うこともまったく理解できない時期だったのに。
死にそうに思えば人間大抵のことはできるものです。
「先生!胃が痛くてたまりません。胃に穴が空いたような痛みです。それと熱もあります、38度。」
『最近何かへんなものを食べましたか?』(妙齢の日本人の女医さん)
「昨晩は和食の店でモツ鍋、昼はサバの塩焼き、朝はパンと牛乳ぐらいです」
『ふむ、ちょっと触診してみますね。ここは痛いですか?こっちは?』
「先生、どこも痛いです」
『腸のほうも押してみます。ここは?』
「包丁を突き刺されたように痛いです」
『昨晩、下痢は?』
「下痢の症状はありません」
『おそらく大丈夫。胃に穴は空いていません。空いていたら喋れませんから。では、ちょっと血液検査もしますね』

~血液検査の結果が出るまでおよそ30分。再び診察室に呼ばれて~

『ウイルス性胃腸炎ですね』
「ウイルス性胃腸炎?ノロウイルスみたいな??」
『そう、ウイルス性です。残念ながらこのウイルスに効く薬はありません。数日は安静に、二次感染防止のため5日は自宅療養してください』
『それと、数値的には現在かなり痛いはずです。大したものです、普通なら歩いてここまでは来れません』
「はぁ、ありがとうございます、が、センセー、それよりこの痛みを和らげる方法は?」
『根本的には出すもの出すしかないですね。(笑)』
『検査の数値を見るとあと数時間で酷い下痢がはじまると思います』
『下痢止めを処方しておきます。ひと通り出すものだしたら、脱水症状にならないように下痢止めを飲んでください』
『症状が落ち着くまでは絶食。ただしポカリのようなもので水分は十分に摂ってくださいね。概ね2日で痛みはなくなります』
『あと、痛み止めの点滴も打っておきますか』
「お願いします!!」
『点滴の途中でトイレに行きたくなったらナースを呼んでください。ナースがトイレまでついていきますから(笑)』
「...」

まぁ、センセイのお気軽なこと。
というのも、後々わかったのですが、大抵の日本人は中国に来てしばらくすると多かれ少なかれ同じ病に掛かるようです。
別に私のかかった医者が特別薄情だったわけではないようです。先生にとっては日常茶飯事、風邪と同じぐらいポピュラーな病気なのでした。
中国駐在員にとっては一種の通過儀礼のようなものかもしれません。

ただし.....「ウイルス性胃腸炎」と、かる~い感じで言われましたが、日本だったら「ノロウイルス」の呼び名で大騒ぎとなる病気ではあります。
私は胃痛と発熱だけでしたが、同僚には嘔吐、腹痛、下痢、発熱の四重苦で、この病後、一気に4キロのダイエットに"成功"した者もいます。
まぁ、ゆめゆめ馬鹿にはできない病気ではあります。

しかし、この「ウイルス性胃腸炎」はなかなか避けがたい病気でもあります。
というのも、ノロウイルスは熱に強い上に冬場に流行し易い。
そう、「日本食の店で鍋物なら大丈夫」が通じないのです。
『グツグツ加熱した料理だから安心』ではないのです。
私の場合も前の晩に食べたモツ鍋が元凶だったのかもしれません。

さらに私の場合、妙に腸が丈夫で下痢をしませんでした。むしろ胃痛のショックで便秘ぎみなぐらいでした。
そのため腹痛が和らぐまでに余計に時間がかかり、結局、クリニックを再訪し下剤を処方してもらう始末。
別な同僚は、下痢便のコントロールができず、成人用おむつを着用したと聞いたので、それよりマシかもしれませんが...

中国でも都市部の衛生環境は良くなってはきています。
施設的には日本とそう変わらなくなってきました。
とはいえ働く従業員の多くは地方出身者。衛生観念が都市部の中国人とも大きく違います。
トイレに行っても手を洗わない服務員(店員)は普通にいますし、痰は吐く、手鼻はかむ...
よほど従業員教育の行き届いた店でもない限り、衛生的過ぎる環境で育ったひ弱な日本人の胃腸では太刀打ちできません。

過日、やはり同僚のひとりが「ウイルス性胃腸炎」でダウン。
彼の同僚でもあり、日本への留学経験もある中国人スタッフ(二十代女性)がヒトコト...
『なんで駐在員は来るとすぐにお腹を壊すのでしょうね?私達はだれも罹らないのに。』
私は小柄で華奢で内気なスタッフの、その内臓の強靭さを想像しました。

「我々は華奢な彼女にすら敵わない」

彼我の実力の差に打ちのめされる思いです。

ひと山数万円で辞書を買うか?

これから中国に赴任してくる人に絶対聞かれること、『中国に行くとき何を持っていけば良いですか?』
持ってきたほうが良いものは色々ありますが、必要なモノに対する優先順位は人それぞれです。当然、一概には言えません。
私の場合、時間があればいつでも本を読んでいたいのでKindle(電子ブックビュア)は必須アイテムです。
が、ある人はiPadで足りると言うでしょうし、別なある人は本は読まないからそもそも頭に浮かばないかもしれません。
また、私には「靴べら」も必需品ですが、別なある人にとってその必要性は意味不明かもしれません。
よって、私の答えはいつも『必要なものは人それぞれ、自分の想像力を働かせて決めてください』と返事をすることになります。
ただし、必ずと言って良いほどみんなが持ってくるもので、「不要です」と力説するものがひとつだけあります。
それは 「日中電子辞書」です。

- 日中電子辞書 -

まず結構いい値段です。辞書・辞典が山ほどついて4~7万円台などザラにあります。
しかし、冷静に考えてみてください。
今までの人生で「ひと山数万円」で辞書を買ったことはありますか?
現代英語辞典に英和辞典に和英辞典に英英辞典に類語辞典に医学辞典に日本語アクセント辞典にビジネスレター辞典に、やっと中日辞典。
私の持っていた電子辞書には61の辞書類が入っていましたが、そのうち一度でも開いたことがある辞書は5つもないと思います。

これらを使いこなす知的エリートにはお買い得でしょう。
しかし、私には猫に小判、豚に真珠。使いません、否、使えません。
辞書というのは引く言語の基礎があってこそ使えるものです。
少なくともピンインがわかるようにならないと実用的には使えません。
それこそピンインって何?という知識レベルの赴任時には無用の長物です。

そして電子辞書自体は孤立したデバイスでもあります。パソコンやiPhoneと基本的に連携しません。
辞書を引いた結果をパソコンなりiPhoneなりに転記するのが超メンドーです。
パソコンならGoogleかYahooのオンライン辞書検索を使ったほうがよほど効率的です。
iPhoneなら中国語の辞書アプリを使うほうが遥かに便利です。
中国語の辞書アプリはiPhoneアプリとしては高額(4,100円)ですが、電子辞書と比べれば超お買い得です。

私の場合、大枚を払って持参した日中・中日電子辞書は、しばらくして普段お世話になっている通訳の方に進呈しました。
私の進呈した電子辞書は中国語・日本語自由自在のこの方々をして初めて真価を発揮しています。
(通訳が電子辞書を使う時というのは、既に知っている単語の確認が。)

話を戻すと、私も含めて大抵の人は「海外転勤」「外国暮らし」「外国語」という実態不明のプレッシャーに対する護符として高価な電子辞書を買い求めます。買う時点では高ければ高いほど"霊験あらたか"に感じられます。
海外勤務中に覚えられる単語がせいぜい2千語だとしても、やっぱり10万語載った辞書のほうが心が休まるのです。
日常使うことがなくとも机の引き出しの中に入っていると安心するのです。
しかし、日本に戻ることになったときに、まだ新品同様だけど十分に"お古"になっているものは『日中・中日電子辞書』です。
間違いありません。

それでも電子辞書買いますか?

『不都合な真実』

§ 1

先日、中国人の同僚2人と一緒にタクシーに乗った時のことです。
商談が結構うまく進み上機嫌で話していたら、おもむろにタクシーの運転手が『降りろ!』と。
助手席に乗った同僚が二言三言小声でやりとりしましたが、結局、交差点で止まったところで降りました。

運転手とどういうやりとりがあったのかは特に尋ねませんでしたが、まぁ『日本人は乗せない』ということのようです。
タクシーが個人タクシーだったので、乗る前に少しは気にしていたのですが、上機嫌で話し掛けてくる同僚に同じ調子で返していたのが良くなかったのかもしれません。

『中国を嫌いにならないでください』と謝る同僚ふたり。
元よりアウェイを覚悟している私より、中国人同僚2人にとってショッキングな体験だったようです。
中国にきてもう何年になるでしょう。実は中国で乗車拒否されるのは今回が初めてです。
反日デモのときでもたいしたトラブルもなくタクシーに乗ってきました。
非日常的体験は日常の死角からフッと飛び出てくるものですね。

§ 2

別な日、行きつけのマッサージ店でのことです。
この店、最近はなかなか予約がとれず足が遠のいていたのですが、久しぶりに電話をしたら何時で誰でも空いているとのこと。
それならと、すぐに店に直行、店一番のマッサージ師に全身2時間揉みほぐしてもらいました。

不思議です。
待ち時間なしで一番人気のマッサージ師の施術を受けられるなんてことは過去に一度もありません。
マッサージを受けながら何かあったの?と聞いたところ「円安で日本人がさっぱり来ない」と。
確かに休日なのに店は閑散としていました。

数年前なら1元=12円だったものが、この1年でアッという間に切り下がり、気がつけば1元=19円。
円建で給料を貰っている駐在員の中国現地給与は実に37%少なくなります。
たとえば30万円だった手取りが20万円になると言えばその苛烈さがわかるでしょうか。

最近の中国は、現地化のトレンドで駐在員が減っています。
駐在員ひとりにかかる負担はぐっと増えているのに実質的な大幅賃金カット。
駐在員としては『よく頑張ったから罰を与える』ごとき不条理感を感じます。

§ 3

最後に、日本出張から帰ってきた中国人同僚の話です。
海外旅行で友人や同僚に買い物を頼まれるのは中国でも普通のことです。
彼女が頼まれた品はiPhone6、Coachのバッグ、Burberryのマフラー、BVLGARIの時計。
自分のためにはFerragamoの靴、一澤帆布のトートバッグ、花王ソフィーナの口紅。
おみやげには象印の水筒、アツギのパンスト。

値段の高いものは海外ブランド、日本製品は単価の安いもの、という構成に少し引っかかりますが、結構手堅い買い物をしています。
買い方にメリハリがついています。
高級ブランドならなんでも買うというような下品さがありません。

元々、接客が親切で偽物を掴まされるリスクが少ないことから日本での買い物は人気が高いとのことです。
これに加えて、最近の急激な円安と免税範囲の拡大により、買い物のためだけに日本に旅行しても良いとのこと。
買い物のあとに後楽園ラクーアやスパで疲れを癒やすことも今や定番の行動とか!

§ 4

ここまで3つのエピソードを書いてきましたが、それぞれの話は意識的に読む人をミスリードするような書き方をしました。

乗車拒否の件
日本人を理由に乗車拒否されることは目新しい話ではありません。
特に反日デモのころにはニュースでもよく見聞きしたと思います。
今回の拙文も普通に読めばその文脈で理解するのが普通だとも思います。『中国はまだまだ反日が酷い』と。

しかし私の本当の実感はこの反対です。
ざっと計算して中国でおよそ一千回はタクシーに乗っています。そして乗車拒否にあったのはただ1度です。確率にして0.1%。
そして中国都市部のタクシーは、住所か通りを告げれば正しく目的地に行く便利な交通機関です。この点では日本より便利です。個人タクシー(上海なら赤いボディ)さえ避ければ、生活実感としてタクシーは便利な乗り物です。
実際、上海に住んでいて日本人だから肩身が狭いということはそんなにありません。おそらく多くの上海在留邦人の実感とも合致すると思います。

円安の件
件のマッサージ店の料金は、指圧の場合80元/時間です。これは上海では並の料金です。
この料金を1元≒19円で計算するとだいたい1,500円/時間です。
最近日本でよく見掛けるクイックマッサージが関東都市部でだいたい2,300円/時間ぐらいですから日本に比べればまだまだ割安です。
1元≒12円時代なら約1,000円ですから、日本人で大繁盛するのも当然です。

1元≒19円の為替レートで考えても中国の人件費は日本に比べれば割安です。
また、ちょっと前まで為替レートが過剰に円高だったことも忘れるべきではありません。
不都合なことには大声で文句、都合の良いことにはだんまり、人間だれでもそういうものですが(苦笑)

中国人同僚の日本での買い物の件
中国人富裕層の話は日本でもよく話題になるところです。
この拙文も一読すれば中国人の購買力の高まりを紹介するだけの内容です。
しかし中国人が国外でブランド物を買い漁るにはそれなりの事情もあります。
中国国内では高率の輸入関税に増値税が掛かるため、概ね国外で買うより2割から3割高いのが相場です。
要は、中国でブランド物を買うと目茶苦茶高いのです。
中国人の日本における旺盛な購買意欲の背景には、単に金満というだけではなく苛烈な中国の税制の影響もあるわけです。

§ 5

以上のように、同じ事柄に対しても極端に違う解釈をとることができます(当たり前のことですが)。
同じ事柄から正反対の結論を導き出すことはかなり容易です。
しかし、普段ニュースに接する時、我々は執筆者の恣意により結論が変わっていると意識することは少ないと思います。
実際、反日デモの最中、日・中それぞれのテレビニュースは、とても同じ事象を報道していると思えないレベルで違っていました。
『中国の報道は偏向しているが、日本の報道も相当に偏向している』ことに気がつけたことは自分にとって幸いなことです。

何かの報道がなされるとき、そしてその報道に事実以上の解釈がついているとき、その導かれた結論の反対には「誰かにとって不都合な真実」が隠れているかもしれませんね。

朝は忙しいので

中国に赴任するとたいていの駐在員は中国語を勉強することになります。
必然です。
習い始めは幼稚園児よろしく「マー、マァ、マァァア、マア!」と先生について四声という中国語の基本的な発音を学ぶことになります。
そしてピンインという中国語独特の発音表記を覚えて、その発音表記どおりに発音できることを目指します。
この学習期間は概ね1ヶ月。
しかしこの1ヶ月は四声とピンインをマスターできるという意味ではなく、とりあえずこの部分は勉強しました、という1ヶ月です。
いずれにしても中国語会話のレッスンに入る前に1ヶ月ですよ!

語学留学に来たわけでもない駐在員は、だいたいこの辺りで一度ココロが折れます。
その後ようやく你好、谢谢など初等一般会話に入るのですが、しばらく学習が進むと中国語における発音の重要性が現実にわかり再びココロが折れます。
そして大半の駐在員は1年足らずで中国語に挫折します。

自分の娘ほども年が離れた可愛らしい中国語の先生にマンツーマンで習っても挫折します。
そしてこれは無理からぬことなのです。
ヘタに漢字が読めてしまうので我々日本人は錯覚しがちですが、膠着語の日本語と孤立語の中国語はまったく異なる言語体系なのです。
少なくとも話し言葉としての日本語・中国語の言語間の距離は日本とブラジルよりも遠いんです。

ムリ!ゼッタイ無理!! 大人になってから絶対音感を身につけようとするぐらいムリなのです。

よってオヤジ駐在員の圧倒的多数は目茶苦茶な中国語を使っているのが実態です。
(駐在員の名誉のために言い添えますが、読み書きは中国人もビックリするぐらい流暢という駐在員は多いです。話す時とのギャップがまた中国人の失笑を買うのですが)

当然私も圧倒的多数の中のひとりであります。
本社からの出張者は私が流暢に中国語を話しているように思っているかもしれませんが、本当のところは...
「コレ駄目、高イ駄目、ワタシ、ムコウ岸ノ反対ノ、安イノ、購買シル!」
のような、意味は通じれど格調も知性も教養も感じられない、国辱ものの言葉を喋っているわけです。

ところが一方で中国人も感心するほど本当に流暢な中国語を話す日本人もいるにはいます。
オヤジ駐在員連中のコンセンサスとしてはそれは「女性」です。もう少し細かくプロファイリングすると「若くて、歌がうまくて、関西出身」という絞り込みになります。
まぁ、これは個々人の主観の集積ですから真偽の程は定かではありません。ただしこの意見に賛同してくれる駐在員は多いです、ガチで。

(1)い…当然外国語を覚える上で若さ以上の好条件はありません
(2)がうまい…中国語は歌う言語だと言われます。嘘かホントか音痴の中国人は中国語もヘタだとか!?
(3)関西出身…これはナゾです。ただし男女問わず中国在住日本人に関西出身者が多いことは間違いないです。

三番目の関西出身者が多いということについては、しばらく上海で暮らしていると体感的には「なるほど」と納得するのですが、今の私には関西人を怒らせないで上手に説明する文章スキルがないので今日は書きません(いずれ熟考のうえ別コラムにしたいと思います)。
それでも恐る恐るひとつ例を挙げるなら、上海も大阪も特異的に『ヒョウ柄ピチピチパンツのオバちゃん発見率が高い』ということはハッキリ言っておきたいと思います。

話を戻します。それでも我々駐在員は高度成長期を支えた企業戦士の息子たちです。
やるときはやります。
ついこの間、中国にありがちな下らない(でも深刻な)トラブルで、協力会社の駐在員と共闘したときの話です。駐在員のお名前を仮にA(42歳)さんとします。

トラブルへの対処は、最初Aさんの会社の中国語準ネイティブの女性が対応していたのですが、どうにも埒が明かずAさんが火消し役として出てこられました(トラブルシューティングのエースだとか)。
最初の女性も弁は立つしなかなか頼もしかったということもあり、今度はどれほどの中国語の達人が来たのかと期待しました。が、いきなりAさんから発せられた中国語は「コレ駄目、高イ駄目、ワタシ、ムコウ岸ノ反対ノ、安イノ、購買シル!」
自分の中国力を棚に上げて私は心のなかでズッコケました。
しかし、しばらくすると今まで1ミリも進展しなかった問題がバッサバッサと片付いていくのです。

なぜか? よーくAさんの中国語を聞いていると特徴がありました。
会話中の繰り返しと確認です。
・自分の主張をとにかくブロークンでもなんでも中国語で話す。
・その後自分の意思が正しく伝わったか相手に確認する。
・場合によっては相手に自分の言ったことを正しい中国語で言い直させる(どう理解したか言わせる)。
なるほど!!

オヤジ駐在員とはいえ何年か中国にいればソコソコには聞き取りはできます。
相手に流暢な中国語で言い直させることで、自分の意図が伝わったかどうか確認できるし、相手にこちらの意図を認識させることもできます。一石二鳥です。

くだんのトラブルはAさんの尽力で無事解決し事なきを得たのと同時に、私もビジネスで外国語を使うときの重要な秘訣を得ることができました。
・コトバは自分の意思を伝えるための道具。
・自分の意思がコトバに乗っていれば伝わる、乗っていなければ伝わらない(日本語だろうと外国語だろうと)。
・発音が酷くても相手はネイティブ・スピーカー、何度か言えば相手が意図を考え理解する。

Aさんに感化された私は、翌朝から日本語がわかる中国人同僚にも極力中国語で話すようにしたのですが...
まぁ、そこそこに通じるし、みんな中国語が上手になったと褒めてくれるし、有頂天になりかかっていたのですが...
勢いその日はずっと中国語で通していたのですが...
何人か目の中国人同僚に仕事の込み入った話をした際に...

『朝は忙しいので日本語で話をしてください』

・・・と、飛び切り流暢な日本語で切って捨てられました。

教訓:日本語を喋れる外国人には日本語で話すこと

ナショナル・アイデンティティは大事

先の反日デモについて、日本の報道ぶりは相当にセンセーショナルでした。
こちら中国は(反日デモの最中でも)日本のテレビを「著作権フリー(爆)」で見れてしまう国柄のため、当時は日本の報道、中国の報道、それと自分自身が置かれている現実と、3つの違う反日デモを見聞きすることができました。
日本と中国の報道の振れ幅の大きいこと。同じ事実を基にしてナゼここまで違うのでしょう?
「報道を鵜呑みにしてはいけない」ということを改めて皮膚感覚で理解しまた。

さて、今日の話はその反日デモを遡ること数年前、まだ私が北京に駐在していた頃の話です。
当時も大小様々な反日運動がありまして、さすが政治の都、そこそこに大きな反日デモがあった日だとご理解ください。
以下はその時の同僚駐在員ふたりの選択と結果の話です。

駐在員A

駐在員Aはよんどころない事情で、デモ当日に青島から北京に飛行機で戻らざるを得ないシチュエーションに遭遇しました。
普段でも愛想の悪い北京のタクシーに乗るのは相当気の滅入ることなのですが、一週間分の出張荷物の入ったトランクを抱えている以上、タクシーに乗らざるを得ませんでした。
さらには事務所は電車・バスだと不便な場所、ただしタクシーだと運転手の嫌う中途半端な距離、普段でも乗車3回につき1回は運転手に悪態をつかれる、という疲れる場所であることも相まって、反日デモの今日は絶対的に文句を言われると覚悟して彼は乗車しました。

なるべく日本人と思われないようネイティブっぽい発音で目的地を告げましたが、しょせん広島訛りの中国語、案の定運転士は仏頂面です。返事はなく車は乱暴に発車しまた。
さらに悪いことに車中には抗日戦争中の日本兵の非人道的な振る舞いとその被害を被る母娘のラジオドラマが流れていたのです。
密室の車中に沈黙する日中両国人。
これ以上気まずい雰囲気は後にも先にも経験したことがないと当人は後日述懐していました。

おもむろに中国人運転手が口を開いて以下のやりとりが始まりました。
※注:中国では1人乗車のときには車の助手席に乗ることが多い。この時もAは助手席に乗車。
運:「你是哪国人?」(お前何人?)
A:しばらく間を空けて「我是日本人」<以下日本語に翻訳>
運:〜沈黙〜
A:〜沈黙〜
信号待ち、運転手と思わず目を合わせてしまう
運:〜沈黙〜
A:〜沈黙〜
運:ブハハハハハっ!!(破顔一笑)
運:馬鹿だなぁお前は、他の運転手だったら高速道路の真ん中で引きずり降ろされてるぞ
こういう時は、XX人(アジア某国)だと言えばいいものを
A:日本人は日本人、嘘はつけない。そもそもXX人は嫌いだ
運:ふふん、お前は運がいいよ、今日は俺が安全にお前を家まで送り届けてやるから。次からはXX人だぞ
A:いいや、でもチップは弾むよ
以下ラジオを切って某国人の悪口大会、以下略
※後日の酒席での本人談なので多少の脚色はあるとは思いますが、あらましは以上の通りらしいです。

駐在員B

こちらは住んでいる部屋の漏水の知らせを受けて、ようやく出社した会社のオフィスから自室にとんぼ返りせざるを得ないというシチュエーションでのことです。
一階下の住人とは以前にも同じようなことでトラブったこともあり、仕方なく、かつ大慌てでタクシーを捕まえて乗りました。

<乗車> B:△△路と◯◯路の交差点まで、急いで!
運:〜無言〜
<発車>
~Bの電話が鳴る:同僚中国人から今日は出歩いちゃ危ないと忠告~
〜電話終了後〜
運:「你是哪国人?」(お前何人?)
B:咄嗟に「我是XX人」(XX人だよ)
運:〜沈黙〜
運:違う、お前は日本人だ
B:違う、中国系XX人だよ
運:違う、お前は日本人だ
<停車>
運:気に入らない、降りろ! <下車> 〜とりあえず金は払わない根性だけはみせて片道三車線道路の路肩に降りるB〜

Bはその後もう1台乗車拒否に合うもなんとか3台目のタクシーで自室に戻ったそうです。
部屋の中はトイレの漏水でリビングまで水浸し。
乗車拒否も大きなショックだったようですが、やはり漏水のショックはそれを上回ったとのこと。
(結果として乗車拒否についてはトラウマにならなかったのかもしれません)
なお、会社に戻ってからは親切に忠告の電話をくれた中国人同僚にブチ切れたとの話も。
※こちらも後日の酒席での本人談なので多少の脚色はあるとは思いますが、あらましは以上の通りらしいです。

まぁ、以上ふたつの話からどのような教訓を得れば良いのかは一見するとミエミエですが、実のところ真の教訓は別です。
「駐在国で日和った話を同僚、特に先輩駐在員に決して話してはいけない」ということが本当の教訓なのです。
なぜなら、これ以降B君は「チキン」(弱虫)とアダ名され、厳しくもマッチョな駐在員ヒエラルキーの最下層に転落したのですから。

でも、「次は中国系シンガポール人と名乗ればイケますか?」と性懲りもなく先輩駐在員に尋ねているB君には、そもそも駐在員ヒエラルキーなど眼中にないようです。
そして案外こういうタイプは海外で生き残るんですよね。

優しい未来

初めて中国を訪れる人が最初に感じるカルチャーショックは車の運転マナーの悪さでしょう。
空港に降り立ち市街までタクシーに乗ったみればわかります。
飛行機に乗っているより怖いはずです。
日本ではとっくにいなくなった「神風タクシー」がこの中国では健在です。

年季が入ってキシキシ異音のするタクシーが片道4車線の高速を糸を縫うように爆走します。
先行車があれば必ず追い抜こうとし、先行車がなければドンドン車速を上げる。
しばらくしてその先の車に追いついたまた抜き、そして先行車がなければ...以下略

1勤務につき結構な額を会社に前納して車を借り、それを差し引いた営業収入の数割が本人の上がりという、過酷な給料体系が彼らをそうさせます。
『剥き出しの資本主義』が社会主義国中国の表玄関でいきなり見られるわけです。

さて、目的地に着き、這々の体でタクシーからよろめき降りたとします。
ここがホテルのロビー前ならまぁ安心ですが、降りたところが路上であればここからが本当の用心です。
降りたところが歩道であろうが路側帯であろうが、音もなく電動バイクがあなたを”襲う”かもしれません。
中国ではバイク、電動バイク、自転車、等々、二輪車は交通法規を守りません。絶対です。
ゆえにタクシーを降りるときには最新の注意で左右を見渡して下車する必要があります。ゼッタイです。

さて、降りたとして目的地が道の反対側であった場合は道路を横断する必要があります。
日本なら当然横断歩道を渡りますが、中国の場合交差点の横断歩道を渡るより、道路を渡ったほうが安全なケースが多いです。
歩行者側が青信号で歩いていても右折車左折車がガンガン曲がってくるから危ないのです。
それならばむしろ不通に道路を横切ったほうが相対的に死角が少なくて安全なのです。
この理屈わかるでしょうか? まぁ、上海・北京あたりの大都市に来ればすぐにわかります。

とはいえ、上海を走る車はいい車ばっかりです。BMW、アウディ、ベンツ、ポルシェ、フェラーリ、ランボールギーニ、アストン・マーチン、レクサス...日本の銀座界隈より高級車率は高いのではないでしょうか。
車種のことはさておき、ここでも『剥き出しの資本主義』が見受けられます。
高級車ほどマナーが悪い、要は歩行者のことを考えないで運転します。

日本では前方に歩行者を見掛けたら車を減速させます。中国ではクラクションを鳴らします。
日本では黄色信号になったら減速し状況に応じて停車します。中国では通過しないと後ろからクラクションを鳴らされます。
日本では路側帯を自転車が走っていたら距離をとって追い越します。中国ではクラクションを鳴らして自転車を路側帯に追いやります
。 日本では公用車(警察など官庁の車、公共バス)は安全運転をします。中国では一番危険です。
日本では自分がぶつけたと思ったら謝ります。中国ではぶつけたほうが逆ギレします。
等々

なぜこうなるかというと、伝統的な官尊民卑の風潮に加えて、お金があるほうがエラいと思っているからです。
・高級車に乗っている人は(金持ちだから)エラい(と思っている)のです。
・歩いている連中は(貧乏人のはずだから)道を車に譲るべきなのです。
・さらには公共バスの運転手(木っ端役人なれど公務員)は公務中なので人民は道を譲るべきなのです。
剥き出しの資本主義と社会主義が混交して凄いことになっています。

しかし、こうなるのも仕方ないかな、と最近思うようになりました。

中華人民共和国が成立してからまだ六十有余年。
そして、それ以前の数千年はほぼ動乱の時代。身内と金以外は信じられない歴史が延々と続いてきたわけです。
過酷な数千年の動乱を生き延びてきた漢民族にとって、コネとカネ(身内贔屓と袖の下)は生存戦略です。
生命に関わることです。そうそう生存戦略は変えられません。
そして今、改革開放を経て日本のバブル期をも凌駕する経済的繁栄!

日本もかつて同じ道をたどってきました。
土地成金がキンピカの高級車を乗り回し、バブル長者が六本木ヒルズを専有して、今の日本の文化があります。
散々無駄に贅を尽くした世代の3代目ぐらいになって、ようやく文化的に成熟するのではないでしょうか。
そして日本から官尊民卑の風潮がなくなったのも、ある意味"成金"が"官"を凌駕した結果ではないでしょうか。

そういう目で現代中国を眺めると、いま正に「改革開放≒ブルジョア革命」進行中とも見て取れます。
だいたい先行きは見通せますね。
少なくとも道路事情については、遠からず、遅くとも二十年後には、おそろしく穏やかに優しくなっているだろうと、私は信じています。